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総体として

自分がどこまでいけるか
にはもちろん興味があるが
総体としての人間がどこまでいけるか
にも興味がある

人間は進化のどんづまりではない
生物はもどかしかったのだ
突然変異と自然淘汰と膨大な時間の浪費からしか
前にすすめないことがもどかしかったのだ

生物は遺伝子をリレーする
人間はさらに知識をリレーする
文化は総体としての知識である

アダムとイブがいったいどんな姿形をしていたのか
まだわかっていないけど
それはアミノ酸に毛が生えた程度のもんだったはずさ

もしかしたら、興味があるのはわたしだけではないかもしれない
食卓にならぶ運命の鶏や
排ガスにまみれた街路樹や
無機物の塊にすぎない地球や
からっぽな空間にすぎない宇宙も
熱をあげてるアイドルを見るような眼で
最前線を見守っているかも

それとも彼らは株主かパトロンか
わたしたちに惜しみない投資をしてくれているのか
だとしたら前進しているのは総体としての宇宙なのか

わたしたちは無邪気なファンに支えられているんだね
なかなかどうして頼もしいじゃないの

宇宙は地球を造って
地球は生物を養って
生物は人間を生んだ
そのリレーは宇宙の存在が決定的になったときから
延々と続いてきた
次の走者はどこかにいるのか?
総体としての存在のアンカーは誰だ
どこかに漸進しているのかどこまでも前進するのか
それはまぁわからないけど
とにかく今が途中であるのは確かなことだ

わたしは総体としての存在がどこまでいくのか興味がある

2004-03-05