まだ冬は終わらない
自転車で駆けると
襟元から
冷たい風が吹き込んできて
昔の記憶に突き飛ばされた
そのころは、だらしなく空いた
学ランの襟元から
風は流れ込んできた
冷たさだけを胸で感じて
寒さは忘れてる
心が背中にあって
耳とか五感なんかもそっちにいってて
ほかはおろそか
周りが見えていない
めいっぱいペダルをこいでもノロノロで
細くて弱々しい腕が、必死になってハンドルつかむ
あの頃は今よりぜんぜん貧弱だった
衣擦れの音や
布越しに感じる圧迫感に
ドキドキして
星がやたらときれいに見えて
夜空と道がずっと続くような気がしていた