フェムトセカンド過去ログ

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■2007/4/3 火曜日

友野典男「行動経済学」

先月から読んでいる本を読み終わった。茂木さんが良く話題にする神経経済学についての入門書を探しているときに、池田信夫さんのブログでこの本をたまたま取り上げられているのを見て、即買った。行動経済学だから神経経済学のこととは違うかな?と思ったが、Kahnemanのプロスペクト理論のことなどがでてくるし、いいかと思った。行動経済学がどんなものかということも知りたかったし。とりあえず、神経経済学が「行動経済学+主にfMRIを使った脳活動計測」的な枠組みであるということが確認できた。行動経済学というのは、読んでいると認知心理学とあまり変わらないように思える。 時間割引における双曲割引と指数割引、逆転する選考の話なども出ていて、これもこの分野の話として扱われていたのかと驚いた。

ひとつの発見だったのは、ノーベル経済学賞受賞者のKahnemanが実はがちがちの心理学者だということ。

Daniel Kahneman in Wikipedia
このページにはこうある。
he is the winner of the 2002 Nobel Prize in Economics for his work in prospect theory despite being a research psychologist and not an economist. In fact, Kahneman claims to have never taken a single economics cours
彼は2002年にプロスペクト理論に関する仕事でノーベル経済学賞を受賞したが、それは彼が心理学者としての仕事したものであって経済学者としての仕事ではなかった。事実、カーネマンはこれまでにひとつだっって経済学の授業を受けたことはないと言っている。

このカーネマンはなかなか面白い経歴の持ち主で、このWIkipediaのページによると、
Kahneman spent his childhood years in Paris, France and moved to Israel in 1946. He received his B.Sc. in mathematics and psychology from the Hebrew University in Jerusalem in 1954, after which he served in the Israeli Defense Forces, principally in its psychology department. In 1958 he went to the United States and earned his Ph.D. in Psychology from the University of California, Berkeley in 1961.
子供時代をパリで過ごして、イスラエルに移住。そんでヘブライ大学で数学と心理学の学士号を取得。それからイスラエル軍(!)の心理学部門に従事していたらしい。(友野さんの本にもカーネマンが軍隊に所属していたということが書いてある)その後、カリフォルニア大学で心理学のPh.Dを取得したとのこと。この人、会って話したら相当面白いんじゃないか?と思った。

行動経済学というのは心理学と経済学が”復縁”してできた分野だらしい。この本の副題にもなっているが「経済は感情で動いている」のであって、従来の経済学はその点を全く扱えていなかった。それをなんとか扱おうとしたのが行動経済学であると。

オレは大学院の入試の面接の時に「僕は感情に興味があります」と言って入ったのだけど、感情を扱うためのこういうアプローチの仕方もあったのかとちょっとした発見だった。「感情と理性のダンス」という言い回しが出てきて、カッコイイ!と思った。出典はFinucane et alによるJudgment and Decision Making: The Dance of Affect and Reasonという論文らしい。その入試の面接の時に、「理性が感情を支配するという古来からの考え方をぶっ壊したいんじゃー、ぼけー!(多少脚色あり)」ということを言ったのだが、やはりそう考えている人はすでにいて、がんばってそれを成し遂げようとしているんだということがこの本を読んでいてわかった。理性にできるのは「最適化」だけだと思う。ゴールを決めること、そしてそこに向かって走る駆動力は感情によってしか生み出されないと思っている。そうしてオレは感情→Motivation(欲求)→自発性という感じでいまの研究に向かったのだった。

この本はReferenceもしっかりしておりいい本です。心理学・経済学のあいの子である行動経済学が俯瞰的に過不足なく、そしてとても整理されて述べられており、最後の章が神経経済学に当てられている(ちょっとあやしい記述もあるが)。この本を読むだけでもだいぶ視野が広がったように思います。おすすめします。

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This web site names フェムトセカンド / femto second = 10-15 秒 .
Author: 野澤真一 / Nozawa Shinichi
since 2006/4/1