フェムトセカンド過去ログ

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■2007/2/10 土曜日

ミツバチの遺伝子、ジストニア

以前、先輩に「これ面白いよ」といって渡された新聞記事を読んだ。ミツバチの習性に関するもの。ミツバチの驚くべき認知機能に関するものだったが、興味を引いたのはおまけ的に記載されていたハチの性質だった。

「働きバチはすべてメスで、持っている遺伝子は女王バチと全く一緒」というもの。そうか、そういう生の形態もあったのかと感心した。我々人間を含む多細胞生物は、文字通りたくさんの細胞からなっている。そして、各細胞が持っている遺伝子は全く同じなのだが、すべての細胞が同じように振る舞うわけではない。それでは能がないのである。細胞ごとに遺伝子発現パターンが違うので異なる機能・性質を持った細胞になる。こうして、単細胞レベルでは実現できなかった高機能が実現されるのである。

ミツバチの場合は、単細胞から多細胞への拡張がさらに単個体から多個体へと適用されたと見ることができるんじゃないか。それが、オレが感心し、面白いと思ったところである。同じ遺伝子を持っているのに、個体としての遺伝子発現パターンが違う。つまり、一匹の女王バチと無数の働きバチを合わせた群体が一個体であると捉える見方ができるんではないだろうか?と思った。

機能分化の結果、手や足や耳や目や、各種内臓、脳の領野などができていったわけだが、そんなものでは手ぬるい!とばかりに、個体レベルでの機能分化を成し遂げ、子供を産む個体とミツを集めてくる個体という風に分けてしまったんじゃないか。

なんとなくオブジェクト指向言語の”インスタンス化”に似ているな、と思った。そう思ったところで、ハッっとしたのが、そもそもJAVAにはポリモーフィズム(遺伝子多型)という特徴があるのだということを思い出した。そうか、JAVAを作る人がそういうのを念頭に置いてつくったんだから、似ていると思うのも当たり前だ。

個体としての遺伝子発現パターンを変化させるのは何かという疑問が当然湧くと思うのだが、それに直接言及することは記事には書いていなかった。ただ、働きバチにローヤルゼリーを食べさせ続けると女王バチになると書いてあったから、たぶんそういうことなのだろう。

昨日は有楽町で「神経の発生・変性・再生-疾患研究の最前線-」というシンポジウムの市民公開講座を聴きに行った。大隅典子さんの脳ができあがる仕組みという話を聞いてみたかったのだ。以前から脳の発生に興味があった。回路の性質によって機能が実現される以上、発生を理解することで回路の性質をより詳しく理解できると思っている。大隅さんのお話は、かなり一般向けに配慮した造りになっていて、とてもわかりやすかった。一応専門家の部類に入る自分としては物足りなさはあるものの、発生分子生物学は射程外であるわけで(ややこしい表現だな)得るものはあった。

Pax6という遺伝子の役割がわかってよかった。この遺伝子がその下流にあるたくさんの遺伝子の調節をしている”親分”として働いていて、それは中脳を除く脳のほぼすべての領域で発現しているらしい。「あれ、Pax6って言語と関係してなかったっけ?」って思ったがそれはFOXP2という遺伝子で全然違かったというのは内緒だ。

大隅さんの話を聞いたら帰ろうと思っていたが、休憩をとらず講演が続いたので退席しづらくそのまま聞き続けた。その後にインフルエンザ脳症とジストニアの話が続いた。インフルエンザの話はすこしためになった。ジストニアの話が予想外に興味を引いた。ジストニアの話の前半はボツリヌス毒素を筋肉に注射することでジストニアを緩和するというもの。ボツリヌス毒素はアセチルコリンレセプターに関与するということで、しばらく前にカンデルで読んだ、筋肉と神経が接続するEndplateのことを思い出した。あれを読んだからこの話わかるぜ!と、うれしかった。後半は、ジストニアの患者に電極を差し込んで治療するという話。電極は淡蒼球内節に刺すという。淡蒼球内節!それこそ、オレがこの間カンデルで読んだ基底核の話でもろにかぶる話だった。そうか!淡蒼球内節か!そこを刺激することで視床への抑制が強まり、視床への興奮性出力が抑制されて不随意運動が抑制されるということですな!ふんっ(鼻息)と得意げな気持ちになった。

ジストニアの患者さんの写真や動画を豊富に見ることができた。その姿は痛ましい。腕を伸ばしてグーパーしてください、といわれても勝手に首が動いてしまう。まぶたが勝手に閉じてしまう。体をまっすぐに維持することができない。勝手に腕が後ろに引っ張られてしまう。明らかな異常さが漂う。だけど、そういう姿をみることで、単語だけでしか知らなかった症状や病気がリアルに実感できる。ピンと来なかったものが腑に落ちるようになる。直視するには感受性が邪魔をする。こういう時に、Detachmentは必要なのである。

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Author: 野澤真一 / Nozawa Shinichi
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