フェムトセカンド過去ログ

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■2006/10/31 火曜日

輪講、月光写真

午前、カンデル輪講。5章、神経タンパク質の輸送と合成。へらいさん担当。endplasmでpolysomeを形成してタンパク合成が行われ膜の内外にでていく様をきちんと勉強するのは今回がはじめてだった。本当に、本当に、生体はよくできている。axonの末端にはmiclotubleの上をkinesinを使ってvacuolar apparatusとかが輸送される。よくできている。といっても実際はわからないことだらけだが。なにはともあれ、完全に専門外でこの先接点のなさそうなこういう話も、一度はやっておいた方がいい。一度だけでいいから。

昔から不思議に思っていた疑問があって、それは膜貫通タンパクが如何に膜に輸送され膜を貫通してある形態をとるかという問題。ノーベル賞受賞者のMackinonの同僚でもあり妻でもあるMackinon夫人にそのことを質問したことがあったがわからないと言われたので、専門家がわからないんだからきっとまだよくわかってないんだろうなと思っていたら実は古い版のThe Cellという標準的な細胞生物学の教科書に載っていたし、カンデルにも簡単に書いてあった。まず膜にどのように輸送されるのかという問題は、mRNAからタンパク質への翻訳が膜にくっついて起こるということで解決。どのように複雑な膜貫通構造をつくるかというと、膜に穴を開けるタンパクがあって、まあそれのお陰とあとは自己構造化能力、疎水性のアミノ酸配列の作用によってなんとかやってるんだろうなということが想像できた。ちゃんちゃん。

オレは本当は数学とか物理とかやりたかった人間なんだけど、間違えて応用化学科なんてところに入っちゃって居心地の悪さを感じつつ学部を終えたわけだが、そのときに身につけた知識が、それもあんまおもしろくねえなあと思いながら身につけた知識が花開くように役に立っている。こういう分子生物系のミクロな話の時だけだけど。親水性、疎水性という言葉はなんてうさんくさい概念だろうと常々思っていたが、タンパク質の立体構造や付着などを考えるときは本当に強力に作用したり、実験結果の写真を見て、これはクロマトグラフィーの一種だなとか放射性同位体つかってトレースしてるんだなとか詳しいことまではわからないがだいたいそれによって何を示したいかを汲み取る事が出来る。それはやはり生物よりひとつ下の階層の科学である化学をやっていたお陰だろうと思う。そういうのを感じるとき、嬉しい。

お昼、メンバーで学食にごはんを食べに行った。みんなで雑談しながら食べていたら、ふと、中村研の澤さんが「野澤君、君は修士を卒業したら・・・」と間があって、みんなが次に何を言うのかと注目した。オレは「博士に行くのかい?」とかそんな質問がくるのかと思ったが、この人はオレが博士に行くつもりなのを知ってるはずだった。じゃあ何を聞くつもりだろうと思っていたらこうきた。「自衛隊に入らないか?」一同爆笑。まず、いきなりオレの進路の話を持ち出した時点で脈絡がなかったが、さらに輪をかけるように脈絡もなく自衛隊 ときた。さらに、絶妙の間合いもあってかなりみんな笑わされてしまった。

もっとも、自衛隊というキーワードが全くその場と無関係というわけではなくて、この澤さんというひとは現役の自衛隊員なのである。なぜ現役自衛隊員が東工大で脳科学の研究をしているのか不思議に思うかも知れないが、オレもそこら辺の事情は何度か聞いたことがあるが、それでもやはり不思議だから仕方ない。

澤さんのホームページ

昼食後、上野の芸大に移動。月の光で写真を撮る写真家の石川賢治さんの話を聞く。石川さんは木訥な感じで、話しぶりは誠実だった。写真家としてプロとしてふさわしい仕事ぶりをしていることがうかがわれた。月明かりに照らされた世界は静謐で、あの世とかあらゆるものが死に絶えた世界とかそういうものを想起させるような静かな美しさがにおいたっているかのようだった。

石川賢治さんのページ

授業後、毎回恒例の公園での酒宴。酒宴といってもコンビニで酒とつまみを買ってきて、立ちながら紙コップで飲むだけである。普段は茂木さんは隅の方に座ってMacをカチャカチャやって、「オレはいいから、お前ら飲め!」と公園に場所を移しても仕事をしているのだけど、今回は珍しくフラフラと酒を飲んで色んなことを言ってみんなを笑わせていた。

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This web site names フェムトセカンド / femto second = 10-15 秒 .
Author: 野澤真一 / Nozawa Shinichi
since 2006/4/1